SmartCloud コラム

IDC Japanコラム 【第2回】 AI の活用領域:産業分野とユースケース(使い方)

2022.03.29画像認識AI

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IT調査会社 IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ/IT スペンディング グループディレクターである眞鍋 敬氏により、全4回を通して、 AI活用の現状と今後、AI の活用領域:産業分野とユースケース(使い方)、AI の実践的活用というトピックについて、提言していただきます。

連載第2回では、「AI の活用領域:産業分野とユースケース(使い方)」について、ご紹介いたします。

 

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IDC Japan

ソフトウェア&セキュリティ/IT スペンディング

グループディレクター

眞鍋 敬氏

 

前回のコラムでは、AI が特定領域の特定業務での利用から、次第にさまざまな分野に広がりをみせていること、特に認知系 AI 活用の代表分野としての画像認識分野では、深層学習が実用的になったことから、活用範囲の広がりが期待できることについて挙げました。

では、実際の AI の活用の現状と今後について、どのような見通しがあるでしょうか。IDC が 2021 年にユーザー企業に対して調査した結果では、AI システムに対する IT 投資は産業分野全体の平均で 47.7%とほぼ半数の企業が「投資を増加させる」と回答しています。

この結果は、ユーザー企業の AI システムに対する期待が高いことを顕著に示しています。

「投資を減少させる」とした回答者は平均で 22.5%と約 5 分の 1 程度ありますが、この中には、すでに初期的な AI システムに関する IT 投資を完了している企業が含まれていると考えられます。例えば、数年前に大手銀行の各行は、顧客サービスやリスク管理に AI を利用することを相次いで発表し話題を集めました。Figure 1 では金融業で投資減少傾向が見られますが、初期的な投資が大手金融業では完了している理由が大きいのではないかと IDCでは考えています。

一方、サービス業、公共(ここでは電力、ガス、水道、医療、教育を含みます)、製造業では、AI 関連の IT 投資を増加させるとした企業が 50%を超えており、投資に対する意向が強いとみられます。

industrial-sector-and-use-cases-ai-figure-1.pngFigure 1. 企業の AI システム関連投資の意向(2021 年)

IDC Japan, February 2022

 

この投資意向の差異はどこから来ているのでしょうか。ヒントは AI の使い方にあると IDCでは考えています。

Figure 2 は、IDC が Figure 1 と同一の調査にて、現在ユーザー企業が利用している AI システムのユースケース(利用方法)を調査した結果について、トップ 5 のユースケースを抽出したものです。Figure 2 を見ると、上位 2 項目の「IT オートメーション」「自動顧客サービスエージェント」は産業分野を横断した業務の自動化を補助する使い方で、いわば「ホリゾンタル」な利用方法と言えるでしょう。一方、残りの 3 項目である「品質管理」「自動予兆保全」「サプライ/ロジスティクス」については、製造業/流通業や公共/自治体などで多く利用される、いわば産業特化型(バーティカル)な利用方法であり、この比率が全体のユースケースの中で高いことがわかります。現在のところ、ホリゾンタルなユースケースとバーティカルなユースケースは AI システム市場内では混在して利用されていますが、IDCでは次第にバーティカルな利用方法、すなわち産業で独特のワークフローや業務を自動化したり高精度化したりする利用方法が増加すると考えています。

industrial-sector-and-use-cases-ai-figure-2.pngFigure 2 企業の AI システムの利用状況(ユースケース別、2021 年)

IDC Japan, February 2022

 

この理由の代表的なものとしては、産業特有の業務やワークフローは、パッケージ化されたソフトウェアによるコスト削減機会が多くないため、人手やカスタムソフトウェアなどで対処しているケースが多いことによると考えられます。例えば製造業の製造ラインで、製造品の瑕疵を目視で判断する業務は、他の産業ではあまり見受けられない業務であり、さらに熟練した技術者が人手で行っている場合も多くあります。このような業務を IT で置き換えて人材不足を補い製造効率を向上させることは、製造業における DX(デジタルトランスフォーメーション)には今後、必須のビジネス要件になると考えられます。

次回は、産業特化型ユースケースの例を考察します。

 

tmanabe_IDC_round.png 著者:眞鍋 敬

グループディレクターとして、ソフトウェア/IT セキュリティ/OT セキュリティ市場と IT 支出に関する調査を統括。また、専門分野としてコミュニケーションをベースとしたソーシャルビジネス市場やユニファイドコミュニケーション(UC)/コラボレーション市場などの通信とソフトウェアの融合分野、CRM/デジタルマーケティング/デジタルコンテンツ市場などのフロントエンドアプリケーション市場、およびビッグデータ、AI システム/RPA/顧客エクスペリエンス市場などのデジタルトランスフォーメーションにも跨った調査を実施している。
IDC 入社以前は、国内大手製造ベンダーにて、通信/ソフトウェア/ソリューション分野で機器設計、システムエンジニアリング、コンサルティング、商品企画、マーケティング、事業企画/運営を20 年以上経験。

 

 

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